1968年ニューヨーク生まれ、栃木県育ち。東大農学部農業生物学科卒業後、同大学大学院農学系研究科修士課程修了(作物学研究室)。オーストラリアのクイーンズランド大学で、子実用ソルガムハイブリッドの窒素条件に対する遺伝的な変異について研究し、博士号(農学)取得。フィリピンの国際稲研究所にてポスドクとして、稲の耐乾性改良のための研究に従事。東大多摩農場に助手として6年半勤務した後、現職。
専門は作物学、アグロノミー、特に作物の水や窒素養分の資源利用と生産。最近は、稲の節水栽培の構築、耐乾性品種の育成について研究。
2002年からタイとカンボジアの灌漑の未整備な地域で、持続的な水田を基盤とした作物生産システムの構築プロジェクトを開始。降水パターンやダム建設、森林伐採の影響などによる水資源の変動に関する情報が必要であるが、しばしば予測は困難である。私たちのプロジェクトでは、圃場、農家、村レベルで、(1)季節的な農業用水資源の変化、(2)異なる水条件での栽培方法の評価、(3)農家の技術選択方法の解明を調査している。
研究室の在る東京都多摩地区では、2003年より、日本の低い食料自給率と都市近郊で極度に低い地域食料自給率、土地利用効率の低下、都市近郊農業のあり方を考えて、パン用小麦の地産池消システム形成のための研究にも取り組む。
エチオピア飢餓が報道された頃中学時代を過ごし、「作物学は飢餓問題の解決に役に立つ人道的な学問である」、というナイーブな夢を持って進学したが、ことはそう単純ではなかった。ポスドクとして、フィリピンで熱帯の天水稲生産性改善のための研究プロジェクトに加わっていた時に、有機農業の指導者である友人から、1960年代から始まる緑の革命を引き起こした近代農学の陰の面とリスクについて、また自然と関わる食料生産技術の多様性について教えられた。農業や農業技術を見ると、人と自然との関わり方が洞察できる。持続的作物生産に資する研究を続けながら、高度に発展し専門化してきた農学をも社会の中で適切に位置づけることが必要であると考えている。センターへの配属に伴い、国外での仕事の比重が増えるかもしれないが、国境、民族、経済、政治、歴史といった研究対象をとりまく文脈をもよく感じて、海外での研究を発展させてゆきたい。